パリでは痛ましい事件が起きました。物騒な世の中です。
でも、私の住む北フランスの小さな街は至って平和です。親切な人が多い。
散髪屋のオジサンは、フランスには山がないと私が言うと、わざわざグーグルの地図を開いて、ここに標高10メートルの山がある!と論証してくれます。いや、先に私の頭を刈ってください。店の前を歩いていたら、散髪して行けとわざわざ店の外まで出てきて、声をかけてくれます。いや、先にお客さんの頭を刈ってください。
道がややこしくて、散歩好きな私はよく迷子になるのですが、道を尋ねると何件かのお店ではわざわざ車で目的地まで送ってくれます。ひたすらフランス語で話しかけられるのは困りますが、ありがたいことです。
今日は久しぶりに土曜のお休み。うれしい。
雨風をものともせず、愛車(レンタカーですけど)のスコダ(チェコのメーカーです)で道場へ向かいます。今日は一人で稽古です。
畳の上での稽古は、思わぬ気付きが生まれます。板の間では意識していなくとも、床の反発力を利用して体を保持しているのです。ですが柔らかい畳の上だと、期待?している反発力が畳に吸収されてしまって、バランスを崩してしまうのです。
バランスを崩さないように、慎重に体を動かします。体重移動もゆっくり。なかなかに厄介なことですが、よい勉強になります。
力を抜くことを常に意識していますが、このバランスとの格闘で普段は気づけない力が存在していることを発見できたように思います。下肢の力は、普通の会社員である私のような者でも腕の力などよりよほど強力です。その強力さゆえに、微妙な力の配分を読み取ることがムズカシイ。畳に吸収されてしまった反発力を補うために、下肢と上体でバランスを取ろうとするのですが、上体は位置を修正し、下肢はそのための力を生み出すのです。
うーん。うまく言葉にできませんね。
ともあれ、脚の力をもう少し細かく感じることが出来そうです。
研究あるのみです。
知らないうちに、子連れの女性が道場の入り口近くで私の稽古を見ていました。
稽古に熱中していたのと、ガラスのドアを閉めていたので気づきませんでした。
ドアを開けると、いろいろ話しかけてくれたのですが、私にはさっぱり分かりません。
どうしてフランス人は英語を話せないのでしょう?最近でこそ、学校で英語を教えるようになったと聞いていますが、それまでは公教育で英語を教わる機会がなかったらしい。たしかに歴史的に英仏は仲が悪いですけど、ヨーロッパで英語がここまで通じないのはフランスだけと聞いています。コミュニケーションをとれないのは実に悲しいことです。
お前がフランス語を勉強しろと言われそうですけど。
どうやら、どこから来たのか、何をやっているのか、と聞いているみたい。
日本からで、抜刀術で、と説明を英語でするのですが、理解してもらえません。
そもそも抜刀術は日本固有の武術です。剣術ならどの国でもありますが、抜刀術は寡聞にして他国のものを知りません。存在していないものを、理解してもらうのは非常にムズカシイ。
結局、見てもらうことにして。
フランスにきて、初めての見学者です。
たぶん、素晴らしいというようなことを言っていたと信じていますが、しばらく見て帰って行かれました。
やれやれ。今日は相棒に来てほしかったですね。