英信流奥の稽古を続けています。
すべての技がムズカシイのは当たり前なので、一般論を述べようとすると前々回の稽古日誌のように「連続技考」のような稽古日誌になってしまいますが、今回は「虎走」という特定の技についての考察をしたいと思います。
「虎走」は走ると書くのに走ってはいけないという厄介な技です。脚力を封じて坐技を稽古していたのに、虎走だけ脚力を使うというのはナンセンス。走るのではなく、重心を少し前へ倒すようにして、股関節などの関節の緩みを利用して足を運ぶのです。歩法と原理は同じです。ですのでやっぱりここでも上半身にも下半身にも力みがあってはいけないことになるのですが、これが言うは易しであることを如実に物語る技であったのです。
抜刀の際に、少しでも上半身に力が加われば、下半身にも力が加わってしまって、それが前進するスピードを落としてしまう。つまりブレーキを掛けてしまうわけです。
技としてはスピードを落として斬撃するなど論外でしょう。
抜刀から次の正面への斬撃までスピードを落とさないようにするのは至難の業です。しかも前進し後退する。こんなところで、自分の歩法のレベルを暴露されることになるとは!
歩法のレベルが低いと、悲しいくらいに抜刀の際にブレーキがかかっているのを感じてしまうのです。うーん、やっぱり”奥”ですねぇ。
悲しみをこらえつつ、亀が這うようにゆっくり動きます。虎走ではなく亀這。
繰り返し稽古し、自分の力みがどこから生じているのか探ります。段々と前進後退するスピードが落ちていきます。横ではキックボクサー達がスパーリングをやめて、不審そうに私の方を見ています。” Are you OK?”
…OKではないけれど大丈夫。心配しないで。
私が日々仕事で疲れているのを知っている人たちですので、何か気に病んでいるのではと気遣ってくれている様子。すみません。まったく仕事のことは考えていません。
あれこれと稽古を重ね、本部講習会に備えているのですが、稽古後に驚愕の事実が!
英信流奥が講習内容に載っていない…。虎走ではなく先走り…。うまい!…。
念のために言っておきますが、こんなオチをつけるために虎走を稽古していたのではありません。
…これが受験生なら受験に必要のない教科を勉強していたということで、無駄とは言いませんが、ガックリくるところです。
私の行った稽古は、いろんな考察の機会を得ることが出来た非常に得難い稽古で…。
何事も正しい情報を得てから準備を始めないと悲しい結末になるという教訓を提示することにして本日の稽古日誌を擱筆します。